結論
民泊は、制度を決め、物件の使用可否を確認し、自治体と消防へ事前相談したうえで、管理体制を決めて届出・許可を進めます。物件契約前に、家主の承諾、管理規約、条例、消防設備、管理委託の要否を確認することが重要です。
例外
住宅宿泊事業法で届け出る場合、年間の宿泊提供日数は180日が上限です。自治体の条例で営業できる区域・曜日・期間がさらに制限されることがあります。
民泊を始めるとき、最初に予約サイトへ登録する必要はありません。先に決めるのは、どの制度を使うか、その物件で営業できるか、消防と管理体制を整えられるかです。
物件を借りた後で「管理規約で禁止されていた」「消防工事の見込みが合わない」「家主不在型なのに管理会社が見つからない」と分かると、営業前から固定費が発生します。物件契約や大きな工事の前に、自治体・保健所と消防署へ同じ計画を伝えて確認してください。
民泊を始める7段階
- 使う制度を決める。住宅宿泊事業、旅館業法の簡易宿所、対象地域なら特区民泊を比較します。
- 物件を確認する。賃貸人・転貸人の承諾、マンション管理規約、用途地域、自治体の条例、住宅の設備を調べます。
- 自治体と消防へ事前相談する。平面図と運営案を持参し、窓口、必要設備、近隣周知などを確認します。
- 管理体制を決める。家主が不在になるか、住宅宿泊管理業者への委託が必要かを判断し、受託先と業務範囲を決めます。
- 費用と収支を見直す。消防・内装、家具、清掃、管理、予約サイト、保険、税金まで含め、営業可能日数で回収できるか計算します。
- 届出・許可を進める。制度ごとの書類をそろえ、届出番号や許可を得ます。提出しただけで営業を始めないでください。
- 開業後の運用を整える。宿泊者名簿、標識、本人確認、近隣対応、定期報告など、選んだ制度の義務を担当者へ割り当てます。
物件調査、自治体相談、消防相談、管理会社への見積もりは並行して進められます。ただし、窓口の回答を得る前に解約できない賃貸借契約や工事契約へ進むと、後戻りの費用が大きくなります。
物件契約前の停止・進行チェック
次のいずれかが未確認なら、物件契約や大きな工事の前にいったん止まります。仲介会社や管理会社からの口頭説明だけでなく、関係者の承諾や窓口の回答を残してください。
表は横にスクロールできます。
| 確認項目 | 確認する内容 | 主な確認先・資料 |
|---|---|---|
| 所有者の承諾 | 賃貸物件で住宅宿泊事業や転貸が認められているか | 賃貸借契約書、賃貸人・転貸人の承諾 |
| 管理規約 | 分譲マンションで民泊が禁止されていないか | 最新の管理規約、管理組合 |
| 地域の制限 | 条例による営業区域・曜日・期間の制限、用途地域、建築上の扱い | 自治体の民泊・建築窓口 |
| 消防 | 必要な消防設備、使用開始届、検査や消防法令適合通知書の要否 | 所轄消防署へ図面を持参 |
| 管理委託 | 家主不在型に当たるか、物件住所に出動できる登録業者がいるか | 自治体、住宅宿泊管理業者 |
| 収支 | 営業できる日数で、工事・固定費・清掃・管理費を回収できるか | 見積書と月別の収支表 |
民泊の3つの制度
日本で民泊(住宅を活用した宿泊サービス)を営むには、次の3つの制度のいずれかに基づく必要があります。詳しい比較は新法・旅館業・特区の違いで解説しています。
- 住宅宿泊事業法(民泊新法):都道府県知事等への届出制。年間提供日数は180日以内
- 旅館業法(簡易宿所営業等):許可制。日数上限はないが、消防法・建築基準法上の要件が旅館業並みに厳しくなる
- 国家戦略特区法(特区民泊):対象区域限定の認定制。最低泊数2泊3日等の条件がある
住宅宿泊事業法(新法)で始める場合の流れ
住宅宿泊事業法を使う場合の流れは次のとおりです。必要な消防設備や通知書は建物と自治体によって変わるため、全国共通の一式があると考えず、所轄消防署へ図面を持って相談します。
- 届出住宅の要件を確認する:現に人が居住する、または居住の用に供されていた住宅であることなど
- 消防署へ事前相談する:必要な消防設備、届出、検査、消防法令適合通知書の要否を確認する
- 都道府県知事等(保健所設置市等を含む)へ届出をする:届出住宅の図面・住宅提供者の情報等を提出
- 家主不在型の場合は住宅宿泊管理業者に管理を委託する:委託が法律上の義務。詳しくは管理委託の義務を参照
- 運営を開始する:宿泊者名簿の作成・備置、標識の掲示、都道府県への定期報告(年6回)などの義務が続く
そもそも「住宅」に当たるか(第2条第1項)
届出をする前に決まってしまうのが、この要件です。 住宅宿泊事業法は「住宅」を次の2つを両方満たす家屋と定義しています(要約)。
- 家屋内に台所・浴室・便所・洗面設備など、 生活の本拠として使うために必要な設備が設けられていること
- 現に人の生活の本拠として使用されている家屋、 従前の入居者の賃貸借の期間の満了後、新たな入居者の募集が行われている家屋 その他、人の居住の用に供されていると認められるものに該当すること
②があるため、宿泊専用に建てた建物や、募集もしていない空き家は「住宅」に当たりません。 設備だけ揃えても要件を満たさない、というのが条文の作りです。
180日はどう数えるか(第2条第3項)
「住宅宿泊事業」とは、旅館業法(中略)に規定する営業者以外の者が宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業であって、 人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定した日数が 一年間で百八十日を超えないものをいう。
数えるのは人を宿泊させた日数であって、募集していた日数ではありません。 180日を超えると、そもそも「住宅宿泊事業」に当たらなくなります。
届出書に書く7項目(第3条第2項)
届出は住宅ごとに行います。条文が定める記載事項は次のとおりです。
- 商号、名称又は氏名及び住所
- 法人の場合は、その役員の氏名
- 未成年者の場合は、法定代理人の氏名及び住所
- 住宅の所在地
- 営業所又は事務所を設ける場合は、その名称及び所在地
- 管理業務を委託する場合は、委託先の住宅宿泊管理業者の商号・名称又は氏名ほか
- その他 省令で定める事項
第3項により、住宅の図面と、第4条の欠格事由のいずれにも該当しないことを 誓約する書面の添付が求められます。
変更したときの届出には、期限が2種類ある
第3条第4項が、変更の届出をこう分けています。
- ①②③⑤⑦の変更 … 変更のあった日から30日以内に届け出る(事後)
- ⑥(委託先の管理業者)の変更 … あらかじめ届け出る(事前)
管理会社を替えるときだけ「事前」です。 切り替えの段取りを組むときは、この違いに注意してください。
運営中に続く義務(第5条〜第10条・第13条)
| 条 | 内容 |
|---|---|
| 第5条 | 宿泊者の衛生の確保(各居室の床面積に応じた宿泊者数の制限、定期的な清掃ほか) |
| 第6条 | 宿泊者の安全の確保(非常用照明器具の設置、避難経路の表示ほか) |
| 第7条 | 外国人観光旅客への対応(設備の使用方法の外国語での案内、交通手段の情報提供ほか) |
| 第8条 | 宿泊者名簿の備付け(氏名・住所・職業ほかを記載。知事の要求があれば提出) |
| 第9条 | 周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関する説明(外国人には外国語で) |
| 第10条 | 周辺住民からの苦情・問合せへの適切かつ迅速な対応 |
| 第13条 | 標識の掲示(届出住宅ごとに、公衆の見やすい場所に、省令で定める様式で) |
第5条から第10条は、管理業務を委託すると委託先へ移ります (第11条第2項で事業者に適用されなくなり、第36条で管理業者に準用されます)。 詳しくは管理委託の義務にまとめています。
予約サイトへの委託先も、法律で決まっている(第12条)
住宅宿泊事業者は、宿泊サービス提供契約(中略)の締結の代理又は媒介を他人に委託するときは、 住宅宿泊仲介業者又は旅行業者に委託しなければならない。
予約の取次ぎを頼める相手は、この2種類に限られます。 使おうとしている予約サイトがどちらに当たるかは、確認しておいたほうがよい点です。
始める前に確認しておきたいこと
- マンションの場合、管理規約で民泊が禁止されていないか
- 自治体の条例で、区域や時期によって営業可能日数が制限されていないか(京都市・札幌市など特に規制が特殊な自治体があります)
- 年間の稼働予定日数が180日を超える可能性がある場合は、旅館業法での運営も検討する
- 第4条の欠格事由に当たらないか(破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者、拘禁刑以上の刑や本法・旅館業法違反の罰金から3年を経過しない者、暴力団員等ほか)
開業費用は8つに分けて集める
「民泊の初期費用」を一つの相場で置くと、物件ごとの差が隠れます。物件の取得費・賃料、建築・内装、消防設備、届出・図面・専門家、家具・家電・リネン、管理・清掃・緊急出動、予約サイト・決済・光熱費、保険・税金・修繕予備費の8項目に分けて見積もります。
住宅宿泊事業なら、条例による制限を含む営業可能日数で収支を計算します。年間売上を12等分するだけでなく、繁忙期と閑散期を分け、固定費を払える月を確かめてください。
家主不在型は管理会社を届出前に決める
住宅宿泊事業で宿泊中に家主が不在になる場合などは、原則として住宅宿泊管理業者へ管理業務を委託します。候補へは都道府県だけでなく、物件住所、建物の種類、制度、開業予定時期、必要な業務を伝えます。登録上の所在地と実際の対応エリアは同じとは限らないため、現地へ出動できるかを住所単位で確認してください。
見積もりは料率だけでなく、現地対応、24時間受付、清掃、予約管理、出動費、初期設定費、最低料金、届出・消防・近隣周知の支援範囲、解約と引継ぎまで同じ条件で比べます。詳しくは管理委託が必要になる条件と管理会社の見積もりを3社で比べる方法で確認できます。
このページで分からないこと
- 180日の具体的な数え方。第2条第3項は省令に委ねています
- 消防法令適合通知書の要否と内容。所轄の消防署の判断によります
- 自治体の上乗せ条例。区域・期間の制限は自治体ごとに違います
本記事は住宅宿泊事業法・観光庁公表資料に基づく一般的な解説です。届出の詳細要件は自治体・所轄消防署にご確認ください。
よくある質問
- 民泊を始めるにはどの制度を選べばよいですか?
- 民泊を始める方法は「住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出」「旅館業法の許可」「国家戦略特区法(特区民泊)の認定」の3つがあり、どれを選ぶかで手続きも義務も変わります。
- 民泊の年間営業日数に上限はありますか?
- 民泊新法で届け出た場合、年間の宿泊提供日数は180日が上限です。自治体の条例でさらに短く制限されている地域があります。
- 届出のあとに管理会社は必要ですか?
- 家主不在型の場合は、国土交通省に登録された住宅宿泊管理業者への委託が法律上の義務です。
出典
以下は2026年9月25日に確認。自治体の条例・様式・窓口運用は、物件所在地の最新案内を優先してください。