新法・旅館業・特区の違い

同じ「民泊」でも、根拠になる法律が3つあり、手続きも義務も別物です。自分の物件にどれが向いているかを確認しましょう。

結論

同じ「民泊」でも根拠となる法律は3つあり、住宅宿泊事業法(民泊新法)は届出制で年間180日が上限、旅館業法は許可制で日数の上限がなく、国家戦略特区法(特区民泊)は認定制で最低宿泊日数の定めがあります。

例外

特区民泊は国家戦略特別区域に指定された地域でのみ利用できます。地域によって最低宿泊日数などの条件が異なります。

出典: 国土交通省・観光庁「住宅宿泊事業法」関連ページ / 最終更新: 2026年8月30日

3制度の比較

住宅宿泊事業法(新法)旅館業法(簡易宿所等)国家戦略特区法(特区民泊)
手続き届出制許可制認定制
年間提供日数180日以内上限なし上限なし(最低泊数の制約あり)
対象エリア全国(条例で制限される地域あり)全国認定を受けた特区の対象区域のみ
管理業務の委託家主不在型は住宅宿泊管理業者への委託が義務特になし(旅館業として自ら運営)特になし
消防・建築の要件住宅相当の基準(簡易な消防設備)旅館業並みの厳しい基準条例で個別に規定

条文で見ると、どこが決定的に違うか

条文は e-Gov法令検索のAPIから直接取得して確認しました(2026年8月30日取得)。 引用は原文のままです。

① 新法は「届出」、旅館業は「許可」

住宅宿泊事業法第3条第1項は、この関係をはっきり書いています。

都道府県知事(中略)に住宅宿泊事業を営む旨の届出をした者は、 旅館業法第三条第一項の規定にかかわらず、住宅宿泊事業を営むことができる。

一方、旅館業法第3条第1項は「旅館業を営もうとする者は、都道府県知事(中略)の 許可を受けなければならない」です。 届出は要件を満たせば受理されますが、許可は行政の判断が入ります。

② 旅館業には「学校の周囲おおむね100メートル」の規制がある

ここが、立地で結論が変わる一番大きな違いです。 旅館業法第3条第3項は、次の施設の敷地の 周囲おおむね100メートルの区域内に設置場所がある場合、 「その設置によって当該施設の清純な施設環境が著しく害されるおそれがあると認めるとき」は 許可を与えないことができると定めています。

  • 学校教育法第1条に規定する学校(大学を除く)および幼保連携型認定こども園
  • 児童福祉施設(幼保連携型認定こども園を除く)
  • 社会教育法第2条の社会教育に関する施設その他、上記に類するものとして条例で定めるもの

さらに第4項により、この区域内で許可を出すときは、行政はあらかじめ 学校長や教育委員会などの意見を求めなければなりません。 手続きが増え、結論も読みにくくなります。

住宅宿泊事業法には、この100メートルの規定がありません。 学校や保育園の近くの物件では、この一点で新法を選ぶ理由が生まれます。

③ 旅館業の許可には「条件」が付くことがある

第一項の許可には、公衆衛生上又は善良の風俗の保持上必要な条件を付することができる。

旅館業法第3条第6項です。許可が下りても、条件付きになる場合があります。 届出制の新法には、これに当たる仕組みがありません。

④ 「簡易宿所」が何を指すか

この法律で「簡易宿所営業」とは、宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、 宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のものをいう。

旅館業法第2条第3項です。民泊で旅館業を取るときにこの区分が選ばれるのは、 旅館・ホテル営業より構造設備の基準が緩やかなためです。 なお同条第4項の「下宿営業」は1月以上の期間を単位とする宿泊料を受けるもので、 民泊とは別の区分です。

どれを選ぶべきか

  • 年間の稼働が180日以内で十分:新法(住宅宿泊事業)が手続き・設備要件ともに軽く、最も選ばれやすい制度です
  • 年間フル稼働させたい・すでに旅館業の許可基準を満たせる建物がある:旅館業法での運営が向いています
  • 大阪市などの特区対象区域内で、最低2泊3日以上の利用を想定している:特区民泊も選択肢になります
  • 物件が学校・保育園・児童福祉施設の近くにある:旅館業は上記②の100メートル規制で許可が読みにくくなります。新法には同じ規定がありません

自治体条例による上乗せ規制に注意

新法は全国一律の制度ですが、自治体が条例で営業可能な区域・期間を制限できます。特に規制が特殊な例として、次のようなものが知られています。

  • 京都市:住居専用地域での家主不在型の営業に、管理業者の駆けつけ要件(苦情等への10分程度での対応)を課す等、独自の条例があります
  • 札幌市:住居専用地域で営業可能な期間が制限されており、期間外はマンスリー賃貸等への切り替えで対応する事業者もいます

物件のあるエリアの条例は、必ず自治体の窓口で最新の内容を確認してください。

本記事は住宅宿泊事業法・旅館業法・国家戦略特区法および観光庁公表資料に基づく一般的な解説です。個別の物件への適用は自治体窓口にご確認ください。

よくある質問

民泊新法・旅館業・特区民泊の違いは何ですか?
同じ「民泊」でも根拠となる法律は3つあり、住宅宿泊事業法(民泊新法)は届出制で年間180日が上限、旅館業法は許可制で日数の上限がなく、国家戦略特区法(特区民泊)は認定制で最低宿泊日数の定めがあります。
特区民泊はどこでも使えますか?
特区民泊は国家戦略特別区域に指定された地域でのみ利用できます。地域によって最低宿泊日数などの条件が異なります。
180日を超えて営業したい場合はどうすればよいですか?
年間の宿泊提供日数に上限を設けたくない場合は、旅館業法の許可を取得する方法があります。用途地域や建物の要件が民泊新法より厳しくなります。
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