深夜2時の苦情電話は誰が取るのか ― 住宅宿泊事業法が定める苦情対応の義務
公開: |運営: ubusuna works
この記事の結論
近隣からの苦情への対応は住宅宿泊事業法第10条の義務で、管理を委託しても義務は消えず管理業者へ移ります(第11条第2項・第36条)。再委託は禁止のため、契約相手の体制がそのまま深夜対応の体制です。
誰向けか: 家主不在型で管理委託を検討している、届出前後の民泊オーナー様
- 受付の時間帯(深夜・早朝を含むか、誰が出るか)を確かめる
- 現地へ人が向かう場合の範囲と、到着までの目安を確かめる
- 近隣への説明を誰が・いつ行うか(届出の前か後か)を決める
夜中に鳴る電話を、誰が取ることになっているのか。届出を出す前にここを詰めておかないと、始まってから毎晩自分が起きることになる。
苦情への対応は、心がけの問題ではない。住宅宿泊事業法第10条が「苦情等への対応」という見出しのもとに置いた義務である。条文は、住宅宿泊事業者に対し、届出住宅の周辺地域の住民からの苦情および問合せについて、適切かつ迅速にこれに対応しなければならないと定めている。
「適切かつ迅速に」に、営業時間は書かれていない
条文に時間帯の限定はない。深夜であっても、宿泊者が原因で近隣が困っているなら、そこは対応の対象に入る。
近隣とのやり取りは、苦情が起きてからだけの話でもない。第9条は「周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明」という見出しで、宿泊者に対する説明義務を定めている。騒音を出さない、ごみをどこへ出す、といったことを宿泊者に伝えるところまでが、事業者の側の仕事だ。
つまり法律は、苦情を減らす手前の工程と、起きてしまった後の工程を、別々の条文で押さえている。
委託すると、義務は消えるのではなく移る
家主不在型で管理を委託した場合、この義務はどうなるのか。ここは条文が二段構えになっていて、読み違えやすい。
まず第11条第2項が、住宅宿泊管理業務の委託がされた届出住宅において住宅宿泊事業を営む住宅宿泊事業者について、第5条から第10条までの規定を適用しないと定めている。ここだけ読むと義務が消えたように見える。
消えていない。第36条が、同じ第5条から第10条までの規定を、当該届出住宅において住宅宿泊管理業を営む住宅宿泊管理業者について準用すると定めている。
ここが大事
委託しても、苦情対応の義務そのものが消えるわけではない。事業者から管理業者へ移る。だから委託先を選ぶときに「どこまで対応してもらえるか」を確かめることは、サービスの比較ではなく、法律上の義務を誰が負うかの確認にあたる。
選んだ会社が、そのままやることになっている
委託先を選ぶうえで、もう一つ知っておくと効く条文がある。第35条「住宅宿泊管理業務の再委託の禁止」である。
管理業務を引き受けた住宅宿泊管理業者が、その業務を丸ごと別の会社へ渡すことは禁じられている。契約した相手がそのまま責任を負う形になっているということだ。
これは選ぶ側から見ると、意味が一つに定まる。**深夜対応の体制を尋ねたとき、その答えは契約相手の体制そのものを指している。**下請けに回されて、聞いていた話と実際の対応者が変わる、という形にはならない。
対応しなかったとき、順番に何が起きるか
いきなり罰則が来るわけではない。条文には段があり、行政が使える手段が並んでいる。
第15条は「業務改善命令」、第16条は「業務停止命令等」という見出しを持つ。実務でまず動くのは、これらの手前にある行政指導のほうである。ただし放置すれば、条文が用意している段を順に上がっていくことになる。
近隣の側から見ると、どこへ言えばいいのかも決まっている。第13条「標識の掲示」により、届出住宅には省令で定める様式の標識を公衆の見やすい場所に掲示することが義務付けられている。標識には届出番号が記載され、管理を委託している場合は、その住宅宿泊管理業者の情報も載る。
注意
標識が出ていない、あるいは記載された番号を国土交通省の登録簿で確認できない場合、届出や登録そのものが済んでいない可能性がある。近隣から見れば、苦情の持って行き先が無いということでもある。
委託先に確かめておくと、後で困らない三つ
法律が定めているのは「対応しなければならない」までで、体制の中身までは書いていない。そこは委託先ごとに違う。届出の前に詰めておくなら、次の三つを聞いておくと後の食い違いが減る。
- 受付の時間帯(深夜・早朝を含むか、含むなら誰が出るか)
- 現地へ人が向かう場合の範囲と、到着までの目安
- 近隣への説明を、誰が、いつ行うか(届出の前か後か)
三つめは見落とされやすい。自治体によっては条例で、届出の前に近隣住民へ書面で周知することを求めている。事業者本人がやるのか、委託先がやるのかは、契約の書き方次第である。
当サイトの住宅宿泊管理業者の一覧では、事業者ご本人に確認が取れた社について、対応エリアと対応業務をそのまま掲載している。緊急時・苦情対応に対応していると回答した社は、その旨も掲載している。管理委託の義務そのものについては管理委託義務を、届出の全体の流れは民泊の始め方を参照されたい。三つの質問を自分で全社に聞き直す時間が無ければ、無料相談に希望条件を伝えると、緊急時対応まで確認できた会社をお伝えする。
出典: 住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)第9条「周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明」・第10条「苦情等への対応」・第11条「住宅宿泊管理業務の委託」・第13条「標識の掲示」・第15条「業務改善命令」・第16条「業務停止命令等」・第35条「住宅宿泊管理業務の再委託の禁止」・第36条(準用)。条文の見出しおよび第11条第2項・第36条の文言は、厚生労働省法令等データベースサービス(住宅宿泊事業法全文)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=68ab5981&dataType=0&pageNo=1 で確認した(2026-08-23取得)。e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/429AC0000000065 。
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