東京23区、条例の上乗せがある区とない区

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この記事の結論

東京23区のうち21区に、住宅宿泊事業法第18条に基づく条例の上乗せ規制がある。多くは平日のどこかの5日間の営業を止める形だが、区内全域が対象の区もあれば、住居専用地域などに絞る区もある。港区のように学校の長期休み期間しか営業できない区、墨田区・葛飾区のように従事者が常駐すれば平日も営業できる区もある。上乗せが無いのは豊島区と北区の2区で、豊島区は2026年12月16日から新しい規制が始まる。

誰向けか: 東京23区で物件を持っている、または持とうとしているオーナー

  1. 自分の物件がある区に、条例の上乗せがあるかどうか
  2. 『平日は営業できない』の中身が、曜日・地域・常駐体制のどれで区切られているか
  3. 登録業者数が多い区が、必ずしも営業しやすい区とは限らない

年間180日。住宅宿泊事業法が全国一律で定めているのはこの数字だけである。ところが同じ東京23区の中でも、実際に営業できる日数は区によって大きく違う。目黒区の物件なら年間およそ104日、荒川区の物件なら区内全域で週末しか使えない。180日という数字だけを見て収支を組むと、区によっては半分近く外れる。

理由は、住宅宿泊事業法第18条が自治体に条例で区域と期間を制限する権限を与えているからである。この上乗せ条例が23区でどこまで広がっているかを、区ごとに確かめた。あわせて、区ごとに住宅宿泊管理業者が何社登録されているかも数え直した。

23区のうち21区に、条例の上乗せがある

「東京は条例が緩い」と思っているなら、それは半分しか合っていない。23区のうち上乗せ条例が無いのは豊島区と北区の2区だけで、残る21区は何らかの形で法定の180日にさらに制限を重ねている。

登録業者数上乗せ条例中心となる制限
新宿区211あり住居専用地域、月曜正午〜金曜正午は不可
港区136あり家主不在型は住居専用地域等で春夏冬の学校休み期間のみ可
渋谷区119あり(2026年7月改正)住居系地域を拡大、家主居住型以外は年間63日程度に
台東区99あり(2026年10月〜)新規届出は区内全域で平日不可(既存施設は対象外)
豊島区98なし(2026年12月〜変更)12月16日から住居系地域等で終日不可、上限も120日に
千代田区90あり文教地区・学校周辺等で日曜正午〜金曜正午は不可
中央区87あり区内全域、月曜正午〜土曜正午は不可
世田谷区57あり住居専用地域、月曜正午〜土曜正午は不可
品川区41あり商業地域を除く区内全域、月曜正午〜土曜正午は不可
墨田区40あり(2026年4月新設)従事者が常駐しなければ月曜正午〜土曜正午は不可
板橋区37あり住居専用地域、日曜正午〜金曜正午は不可
文京区35あり区面積の約8割の地域で月曜〜木曜は不可
杉並区32あり住居専用地域の家主不在型、月曜正午〜金曜正午は不可
江東区30あり区内全域、月曜正午〜土曜正午は不可
葛飾区30あり(2026年4月新設)従事者が常駐しなければ月曜正午〜土曜正午は不可
江戸川区28あり(2026年7月〜)近隣居住型は3か月以上前からの居住が要件、事業者情報を区が公表
中野区27あり住居専用地域、月曜正午〜金曜正午は不可(家主同居型は区長許可で例外)
目黒区25あり区内全域、日曜正午〜金曜正午は不可
北区25なし(検討中)協議会で条例制定を検討中、施行時期は未公表
大田区24あり家主不在型のみ、複数の用途地域で終日不可、学校周辺は月曜正午〜金曜正午も不可
練馬区21あり住居専用地域、月曜正午〜金曜正午は不可
足立区21あり住居専用地域、月曜正午〜金曜正午に加え年末年始も不可
荒川区16あり区内全域、月曜正午〜土曜正午は不可、概ね1km以内への常駐義務

登録業者数は東京都全体で1,422者のうち、23区に1,329者が集まっている。都内の委託先候補の9割強は23区に本社を置いているが、その23区の側がいちばん条例で絞られている、という構図になる。

平日を止める区がいちばん多い。ただし「平日」の切り方が違う

新宿区、中央区、世田谷区、品川区、江東区、中野区、杉並区、板橋区、練馬区、足立区、荒川区。数えると11区が、曜日を基準に平日の営業を止めている。

ただし同じ「平日不可」でも、起点が揃っていない。新宿区・杉並区・中野区・練馬区・足立区は月曜正午から金曜正午まで。中央区・世田谷区・品川区・江東区・荒川区は月曜正午から土曜正午までと、土曜の午前まで含めて止める。板橋区と目黒区はさらに早く、日曜正午から金曜正午までを不可にしている。文京区に至っては月曜から木曜そのものが不可で、営業できるのは金曜正午から日曜正午までの間だけである。区の面積の約8割がこの制限区域に入っており、年間の営業可能日数はおよそ104日に落ちる。目黒区も同じ約104日である。

対象になる地域も割れる。新宿区・世田谷区・中野区・杉並区・板橋区・練馬区は住居専用地域だけを絞っているが、中央区・品川区・江東区・荒川区は区内全域が対象になる。品川区は商業地域と近隣商業地域を除いている点が、他と少し違う。

平日でも、常駐すれば営業できる区がある

墨田区と葛飾区は、2026年4月1日に施行されたばかりの条例で、他区とは違う切り口を採っている。曜日そのものではなく、従事者が施設に常駐しているかどうかで線を引く。常駐していれば平日でも営業できるが、常駐していなければ月曜正午から土曜正午までは宿泊させられない。無人で回す運営を狙い撃ちにした条例で、管理会社が「駆けつけ」ではなく「常駐」を提供できるかどうかが、この2区では収支に直結する。

荒川区も曜日制限(月曜正午〜土曜正午は不可)に加えて、事業者が届出住宅から概ね1キロメートル以内の営業所等に常駐しなければならないという条件を重ねている。曜日と体制、両方を満たして初めて営業できる。

港区はまた別の形をとる。家主不在型で、かつ住居専用地域か文教地区にある物件は、実施できる期間そのものが春休み・夏休み・冬休みの3つの窓に限られる。3月20日正午から4月11日正午、7月10日正午から9月1日正午、12月20日正午から1月11日正午。学校の長期休暇に重なる期間だけが営業可能で、それ以外の期間は丸ごと不可になる。曜日を積み上げるのではなく、最初から使える窓が3つしか無い区である。

まだ条例が無い2区。うち1区は今年変わる

豊島区は2018年の条例制定以来、区域や期間の上乗せをしてこなかった。年間180日以内であれば、曜日や地域を問わず営業できる、23区の中でもっとも緩い区の一つだった。その豊島区が、2026年12月16日から住居専用地域・住居地域・準工業地域・文教地区で終日の実施を不可にする。年間の上限日数も180日から120日に下がる。登録業者数98者は23区で5番目に多く、いま緩いからといって12月以降も同じとは限らない。

北区は、上乗せ条例そのものがまだ無い。区が設置した協議会が条例制定を検討している段階で、2025年1月の初会合から、2026年8月の第2回会合まで議論が続いている。施行の時期は公表されていない。「北区は条例が無い」という情報を古いまま持っていると、施行のタイミングで足をすくわれる。

豊島区・北区の物件を検討している場合

豊島区は施行日(2026年12月16日)の前後で、対象地域と上限日数が変わる。北区は条例そのものがまだ無いが、協議会が動いている以上、今後変わる前提で計画したほうがよい。どちらも「今は緩い」を将来にわたる前提にしないこと。

登録業者数の多さと、条例の緩さは一致しない

新宿区は登録業者数が211者と23区で最多だが、条例は住居専用地域で平日不可という、決して緩い部類ではない。逆に、いま上乗せが無い豊島区は98者で5番目に多い。港区は136者で2番目に多いにもかかわらず、家主不在型は年間の大半を営業できない、23区でもっとも厳しい部類の条例を持つ。

業者数が多い区は、委託先の選択肢が多いという意味では有利になる。ただし、その区で何日営業できるかは別の話である。区を選ぶ前提で物件を探しているなら、登録業者数の一覧と条例の中身は、別々に確認したほうがいい。

委託先を探す前に、区のルールを先に読む

条例が変わったばかりの区(墨田区・葛飾区・台東区・渋谷区)や、これから変わる区(豊島区・北区)では、管理会社の側もルールの更新に追いついていないことがある。委託先の候補に、「この区の条例で今どこまで営業できるか」をそのまま聞いてみるとよい。答えに詰まる会社より、曜日や地域の条件を即座に言える会社のほうが、その区での実務に慣れている。

23区全体の登録業者を地域から絞り込みたい場合は東京都のページから、個別の会社を比較したい場合は一覧から探せる。自分の物件がどの制限に当たるのか区の条例だけでは判断がつかない場合は、無料相談で条件を伝えて確認する方法もある。

180日の数え方そのものについては民泊「180日ルール」の本当の中身に、新宿区・大田区の制限を日数計算まで踏み込んで書いた。47都道府県の登録業者数の全体像は住宅宿泊管理業者は、自分の県に何社いるのかにまとめてある。

出典


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